拾年先の折は

言葉の言枝の言幹の言根の植わった土を翻訳するために。

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雨と風。注意報が出るほどの風が吹くらしいが商店街の吹き抜け通りは雨音だけして、雨は垂直に落ちている気配だ。このところ眠りの質が悪いようで何度も起きたり妙な夢を見たり。寝つきは悪くなかったのだけど昨晩はついに頭が重いような体がこわばるような感じで1時間あまり眠れない。そのうえこうして夜明け前に起きている。眠りも浅いのだろう。起き抜けが夢うつつで今しがたの夢の光景に現実感がある乃至は最近の実体験の記憶と夢の区別がつかない。夢の中の町にはここ数ヶ月行っていないのだからあれは夢だ、と記憶力に確信がないものだから推量に頼らざるを得ない。そんな夢にかぎってSが現れる。夢の中でも夢だとわかるような類の場面には滅多に現れないのに。あるいはSが私の現実だから、Sの非在を頼りに判じていた夢うつつの境線が曖昧になるのかもしれない。数年間でこれなのだ。数十年と連れ添った伴侶を亡くして自失する人が思い遣られる。失ったのは伴侶ではない。失ったのは伴侶なしでは成立しない我が身と我が現実の見境。誰々なしの世界は考えられないなどと言うときも、考えられないのはその人の欠けたこれからのことではなく、その人なしでは嘘や夢と区別がつかないこれまでのこと。夜が白んだ。予報通り風雨が強くなってきた。

言葉の言枝の言幹の言根の植わった土を翻訳するために。