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拾年先の折は

言葉の言枝の言幹の言根の植わった土を翻訳するために。

グイエ2

 『演劇と存在』第3章

 
劇行動の結末としての死について。
 
死の無い悲劇もある、とグイエは言う。死は超越的な力の現れに付随する現象のひとつであって、悲劇の本質はその超越者の存在と、無力ながらも抵抗し、やがて倒される人間の関係にある。よってその出来事は<思いがけない出来事>ではあるが必ずしも不運や不幸ではない、そういう価値判断をさし挟むこともなく超越的な力にただ振り回されることに悲劇誕生の原理があると看破する。
 
人の死は劇的なものである。しかし死んだ狼は劇的ではない。それは機械唯物論的な自然現象にすぎない。劇的な死は擬人化されたもの、人間的なものといえる。初めから約束された結末であることを認めながらも死を自分とは無関係なところに置きたがる人間的な情緒が、偶然に思いがけなく襲われるから死は劇的なものになる。よって劇的な死はいつも劇化されたものとなる。人形は壊れる。しかし人形は死ぬこともある。
 

 

演劇と存在

演劇と存在

 

 

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